千田 誠二 (ちだ せいじ)
プロフィール
英語教育・英語学習、又は外国語・言語コミュニケーションスタイルなどを支える、個のアイデンティティや価値観を紐解いています。大妻英語英文学科生は、女子教育環境下で学ばれていることから、最近のゼミでは外国語教育・学習・コミュニケーションにおける性差(ジェンダー)の側面を扱った文献も取り入れながら、英語学習者・教育者の個の内面性を探っています。これらは、例えば英語コミュニケーションに伴う葛藤であれば、そこから遡って、普段自覚しない「内なる自身のありよう」とその「起点」を安全な環境で「確認する」作業ともいえます。中・長期的にはコミュニケーション「進行中」での個の自覚や認識の深まり、ひいては自身が望む方向への分岐点を生むきっかけとなるでしょう。国内外の学界の流れを押さえながら、必修・選択英語授業での実践や、教職課程科目で英語教育の基本技術を教える場面で、上記の知見を活かしています。
[ E-mail ]schida[at]otsuma.ac.jp
主な著書・論文
- 「主体的な語りを促す質的な英語学習者理解の試み−大学生のライフストーリー・インタビューを足掛かりとして–」中部地区英語教育学会紀要 45号 2016年
- 「CLT時代の英語教育学研究に『質的な見方』が求められる背景とはなにか」大妻レビュー49号 2016年
- 「大学生英語学習者は自己表現をどう捉えているか」中部地区英語教育学会紀要 46号 2017年
- 「英語教育におけるオーセンティシティの再考察:ナラティビティを基軸として」大妻レビュー51号 2018
- 「Input enhancementの考え方を重視した大学英語読解授業における学生の読みに対する意識・態度の変容」中部地区英語教育学会紀要 47号 2018年
- 「冗長性を活かした大学英語読解授業活動を学習者はどのように捉えているか」中部地区英語教育学会紀要 49号 2020年
担当科目
- 英文講読「発展」1、2
- 英語ⅡC、D
- セミナーⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ
- 卒業論文
- Extensive Reading (advanced)
- 英語科教育法Ⅲ
- 教育実習指導Ⅰ
- 第二言語習得論(英語教育学)
ゼミの紹介
教員から
かつて自身の英語学習・教育を改善する上で、数理的な研究・分析をメインとし、短期間に多くの語彙を習得する実践などを行なっていた自分がナラティブ(語り)研究に変更した背景は、奇しくも昨今のコロナ禍がもたらした我々人間生活の変化で起きていることと大変よく似ています。大抵の病気を抑えてきた現代医療をもってしても、科学データが集まった段階でワクチン等を適用した頃には、また別の新たな変異を持つ存在が現れて私たちの生活が再び変化させられる。このサイクルの速さは医学の専門家が予想できない程のものと言います。現代社会における科学と人間の関係のあるべき姿は、20世紀では当たり前とされていた関係性とは逆の、つまり、私たち人間の「生活(行動)・思考」に「科学が実証する結果」を「いかに当てはめていく」ことだとある大学の有名な科学者が言っています。情報伝達のスピードが猛烈に速くなり、人間の個性や多様化が際限なく広がりを見せる中で、「人」が自身の「主体性」や「判断力」をより骨太のものにし、科学的知見との付き合いをどう深めていくかが問われているということです。それはベースとしての「自己理解」なくしては達成できないでしょう。英語教育・学習の場をより深みのあるものとするためには、自身の考え、あるいは情意面といった内面性を反映する自己表現が必ず伴います。外国語コミュニケーションの実践の場では、「自己理解」は最も大事なステップと言えます。そんな思いを抱きつつ、セミナーでも学生の皆さんとあれやこれや意見を出し合っていきたいと思います。
学生から
- 私たちのゼミでは語り事例の文献をいくつかのグループで分析しながら、個人の語りの実践を行っています。現在は自身のライフストーリーについての語りを行っています。
大学生になり、自分の人生を振り返る機会を設けていただけることで、改めて自分と向き合うことができ、アイデンティティを確立することが出きます。 - また、語りには「聞き手」の存在がとても重要になります。質問や感想を伝えることで、語り手が他者からの意見を取り入れ、今まで気づかなかった自分の深い部分を知ることができたり、新しい自分を発見することが出来ます。これは他己分析や自己分析に繋がり、就職活動にも、そして今後の人生にもきっと役に立ちます。
- 他にも外国語・言語コミュニケーションにみられる「アイデンティティ」や「異文化」を中心のテーマに、自分たちがそれぞれ興味、関心を持った事を研究しています。「インタビュー」による言語データを取ったりしていくことで卒業論文にも繋げていきます。
- メンバー全員が切磋琢磨して授業に取り組んでいるため、メンバー同士の仲が良く、温かい雰囲気の中で有意義な時間を過ごすことが出来るゼミです。
過去の卒論タイトル
- 「英語学習者における不安や緊張の要因」
- 「英会話のログから分析する自己のアイデンティティ」
- 「ライフストーリーからみた自己変容の過程」〜「感情」をめぐるアイデンティティを追って〜
- 「自身の英語学習動機づけの違いについて」〜インタビューデータにおける環境・場面に応じた分析〜
- 「長期留学経験者の語りの分析」〜語り手の言語コミュニケーションスタイルに注目して〜
- 「各コミュニティによって変容する自己アイデンティティの考察」
〜映像観察による自身の言語コミュニケーションの違いに注目して〜