学部長から

学部長から

五十嵐 浩司「いま」を生き抜く力を培う

文学部長 五十嵐 浩司

 「生き抜くための文学」。何年か前に、私たちの学部が採用したキャッチフレーズです。
 世界のあちこちで民主主義の土台が揺らいでいる、富める者と貧しい者の差が広がる、地球規模での天変地異が増える、そして何より感染症の脅威が世界の人々の暮らしに変化を迫る――そんな「いま」にぴったりの言葉だと思いませんか。混沌と危機に立ち向かい、新しい価値観で私たちの営みを変えていくには、人間を深い所から見つめなおす人文科学の「知」が欠かせないと考えるからです。

 「ことば」を中心に据えて、人間とその営みについて考える。私は文学部をそうした学びの場と考えています。幅が広く、奥が深い学びがそこでは求められます。すぐに役立つ技術や技能を身に付けたいという、若い人たちにありがちな性急さとは、少し距離があるかもしれません。さまざまな問題にどう対処するか、「すぐに正解を知りたい」という性急さとも、あえて距離を置きたいと私は思います。人類の長い歴史という時間軸を踏まえつつ、人間とその営みについて考え抜く。そうやって培われた本物の「知」こそが、新しい価値観を生み、さまざまな問題について本質を見分ける眼と解決へと導く力を培う――そう考えます。

 日本語と日本文学・漢文学を中心に据える日本文学科。世界言語としての英語と英語圏の文学・文化を学ぶ英語英文学科。「ことば」の枠を超え、異文化とメディアの二つをキーワードに人間の営みを考えるコミュニケーション文化学科。私たちの学部はこの三つの学科で成り立っています。日本へ、世界へ。眼差しの方向はさまざまですが、そこで人間とその営みを掘り下げていこうとする姿勢は変わりません。大学の使命は、自ら考え、判断し、「いま」を生き抜いてより良い未来を創り出す力を涵養することにあるでしょう。文学部はその土台となる学びを提供すると私は自負しています。