学部長から

学部長から

村上 丘言葉の力―その限界と可能性―

人間の体には、様々な限界があります。1トンのバーベルを持ち上げることはできません。1時間、呼吸を止めることもできません。360度、関節を曲げることもできません。100メートルを5秒で走ることもできません。
人間の言葉も同様です。同時に複数の音声を発することはできません。同時に複数の書物を読むこともできません。思いを十分に表現できないこともあります。相手の発言が理解できないこともあります。
現在、様々な場面で〈言葉の力〉が試されています。対話を避け、SNSに頼る人々がいます。LINEを利用する人々の間で、暴言によるいじめが生じています。些細なことで、デマが拡散したりブログが炎上したりします。
しかし、どれほどITが発達しようと、人間は言葉を使わざるを得ません。なぜなら、たとえ万能ではないにせよ、言葉以上に有効な伝達手段がないからです。だからこそ、人間は長い間、言葉を使い続けてきたのです。
これから世界はますます多様化し、他者との意見の相違は先鋭化していくことでしょう。そうした状況の中で、武力に訴えることなく他者と伝達を図るには、〈言葉の力〉を見究めなくてはなりません。
それには、「言葉はどのような仕組みを持つか?」「人は言葉にどのような思いを込めるか?」「美的な表現・効果的な伝達とは何か?」「言葉は社会とどのような関りを持つか?」などの問題意識を持つ必要があります。
スポーツマン・ダンサー・武術家・演奏者は、身体機能の限界に挑み、身体操作の可能性を拡げます。同様に、文学部3学科は、〈言葉の力〉の限界に挑戦し、平和裏に他者と交流する可能性を追求するのです。

文学部長 村上 丘