日本文学科の13人 第七回 天野先生

さて、そろそろ最終回に近づいてまいりました「日本文学科の13人」シリーズ。
今回は、日本語学をご専門とされていらっしゃる天野みどり先生にインタビューをいたしました。

天野先生は、7000種類とも言われている世界の言語の中の、日本語を観察して、どのようなしくみで複雑な意味を生み出したり理解したりできるのかを明らかにしようと研究されているそうです。
他言語と比べることもして、言語の普遍性と日本語の個別性のどちらも意識するよう心がけていらっしゃるとのこと。授業では、現代語だけではなく、日本語の歴史もお話しするそうです。楽しそうな授業ですね!


―天野先生は、大学時代の卒業論文はどんなことについて研究されたのですか。

卒業論文のテーマは「他動表現の構造」というものでした。使役の助動詞を用いた文と他動詞の文との意味の違いを考えて、文の構造を論じました。

―文の構造…。難しそうなテーマについて取り組まれたのですね。なぜこのテーマを選ばれたのですか?

身近なことばの意味を自分なりに考えてみることが大好きで、そんな遊びのようなことの延長上に浮かんだテーマです。今も、日常の読書や会話の中で、ふと、変な言い方だな、とか、なんだかしっくりこないな、とひっかかると、あれこれ考えることが多いです。

―卒業論文のテーマから現在の研究は、変わってきましたか?もし変化がありましたらどのように変化していかれたのでしょうか?

現在は、「逸脱文の意味の理解」に関する構文研究ですので、卒業論文の頃とあまり変っていませんね。
変化しているといいなと思うのは、日本語だけではなく、どのような言語にも共通することが考えられているかな、ということですが、まだまだです。


―先生は別の大学で教鞭をお取りになられていらっしゃり、大妻にいらっしゃったご経歴がおありと伺っておりますが、大妻で教えたいと思ってくださった理由はなんでしょうか?

大妻の日本文学科は、日本文学だけではなく、日本語学も学びの柱の一つとしているので、たくさんのことば好きな学生と出会えるのではないかと思いました。思った以上に、ことばの問題についてたくさんの意見をもらえて楽しいです。

―日本語学ゼミは、学生に人気のゼミですからね!たくさんの意見がでるというのはのびのびと活発な研究がされている証拠ですね。
―昔、お子さんに読んでいらっしゃったお好きだった絵本があったら、教えてください。また、最近読んでおもしろかったおすすめの本はありますか?

たくさんあります。よく読んであげていたので(迷惑だったかもしれません…)。

―たくさんあるのですか!さすが、先生。日本語と共に生きていらっしゃいますね。ぜひいろいろと教えてください。

まずは、
・「あらしのよるにシリーズ」全7巻と、特別編1巻
作: きむら ゆういち 絵: あべ 弘士 出版社: 講談社

親子で引き込まれました。あべ弘士さんの絵もすばらしいです。あべさんは旭川市の旭山動物園の飼育係だった方で、迫力あるオオカミの絵は、動物に対する心情が伝わってくるようです。あべさんの文・絵の、『エゾオオカミ物語』(講談社)もおすすめ。

おまけであげたいのは
・2001年、息子が生まれた年、「みんなのうた」で、岡本真夜さんの「ハピハピバースデー」が流れました。このときのうたと菊田まりこさんの画像に感動してしまいました。そして、その数ヶ月後、本屋でCD付きの絵本となった『ハピハピバースデー』(詩:岡本真夜・絵:菊田まりこ、学習研究社)を発見して即購入。今でも私の大事な絵本です。

―他にはありますか?
・「おさるのジョージシリーズ」原作:M.レイ H.A.レイ 訳:福本 友美子 出版社:岩波書店と「ひとまねこざるシリーズ」原作:M.レイ H.A.レイ 訳:光吉 夏弥 出版社:岩波書店。ジョージのかわいらしさと周りの人々の優しさが大好き。
他にも、宮西達也作・絵の『おまえうまそうだな』(ポプラ社)を始めとする「ティラノサウルスシリーズ」や「おとうさんはウルトラマンシリーズ」(学習研究社)も楽しかったです。

―本当にたくさん教えてくださってありがとうございます!どれも楽しそうな、大人でも一緒に読んで面白そうなものばかりですね。『ハピハピバースデー』のような素敵な出会いも、人だけでなく本との出会いというもので人生は大きく変わるのだろうな、と思わせてくださるエピソードですね。ありがとうございました。


―先生は、休日どんなことをしてお過ごしになられることが多いですか?

・散歩がてらお気に入りのカフェに朝一番に行き、モーニングを食べながら本を読む。
・友人とテニス。
・3、4日、自宅を離れて図書館で本に囲まれながら自分の論文を執筆する。国内の大学の図書館の他、韓国の大学の図書館を利用したこともあります。コロナ禍で最近はなかなか行けなくて残念。

―朝活ですね!早くから活動されていらっしゃって有意義な休日ですね。テニスもされていらっしゃるのですか。かっこいいです。文系の先生方が引きこもりではないことがこのシリーズを通してまりりん、非常によくわかりました。
様々な図書館を利用しての論文執筆は、図書館めぐり旅行もできて、仕事にもなって…、とお得ですね。


―最後に。先生は、北海道にお詳しいと伺ったことが以前ありましたが、北海道でおすすめの場所、体験はありますか?

広い北海道ですから、挙げるときりがなさそうですが…(汗)

夫が北海道出身者です。筑波の大学院で出会いましたが、夫が先に札幌の大学に就職し実家に戻ってしまいました。
結婚した当初、私は筑波、夫は札幌。当時は、学生だったこともあり暇ができると私が札幌に行くという感じで、「札幌に住んでいた」とも言えるくらいです。
その後、二人の勤務先が都内になり同居がかないましたが、それからも毎年行っています。
はじめて北海道に降り立った瞬間、恋に落ちた感じです。北海道の自然、文化、歴史だけでなく、「樺太」時代のこともほんのちょっとだけ詳しいです(大妻女子大学草稿テキスト研究所『年報』第10号)。

―なるほど。そのような理由で北海道にお詳しいのですね。
自然・文化・歴史。ゴールデンカムイなど、いまとてもアイヌ関連は注目されていますから、ぜひゆっくり先生に伺いたいですね。

北海道のおすすめの場所・体験はありすぎるくらいですが、一つだけ選ぶなら、まりりんのふるさとです!ツアーを考えてみました。

―なんと!うれしいです。わたくしの故郷をめぐってくださるツアー。懐かしいです。

・道東の大自然を体験する旅
美幌峠→屈斜路湖→硫黄山→(「川湯ビジターセンター」で道東の自然を学習)→摩周湖→神の子池→阿寒湖→(「阿寒湖畔エコミュージアムセンター」でまりりんの家族に会えます!付近の散策(ボッケを探す散歩)もおすすめ)→オンネトー→(「阿寒国際ツルセンター」でツルを学習)→釧路湿原

この旅の中でも一番のおすすめは「摩周湖」。摩周湖は人が近づけない湖です。高所からそっと見るだけ。霧が晴れた一瞬しか見られないことも。静かに湖面を見ていると吸い込まれそうです。

特別天然記念物のマリモは阿寒湖の植物ですが、環境の変化で絶滅の心配があり、阿寒湖のマリモを直接私たちが見ることはできません。マリモも実は人が近づけない自然なんですね。

違うテーマで、新しい情報も追加したいです。
・「アイヌ文化を学ぶテーマ・入門編」として、2020年に一般公開が始まった「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がおすすめです。https://ainu-upopoy.jp/ ウポポイの中にある「国立アイヌ博物館」https://nam.go.jp/ でアイヌ語を聞いたり、「体験交流ホール」でアイヌの歌や踊りの鑑賞をしたりすることもできます。さらに深く学びたい方には、ぜひ「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」に行ってほしいです。http://www.town.biratori.hokkaido.jp/biratori/nibutani/

最後に、近代文学の資料館としてちょっとおすすめしたいところ。
・ニセコ町立有島武郎記念館…美しい景色も楽しめる記念館。有島の農場も学べます。
https://www.visit-hokkaido.jp/spot/detail_10319.html
・小樽市立小樽文学館…小樽とゆかりのある小林多喜二、伊藤整等の著書や資料を展示。小林多喜二の展示では小説家が生きた社会を強烈に知らされる機会となります。
http://otarubungakusha.com/yakata
・釧路市港文館…釧路新聞庁舎を復元した建物で、釧路新聞記者であった石川啄木の資料展示が2階にあります。
https://kushiro-kobunkan.jimdofree.com/

わたくしまりりんが、「人が近づけない自然」からの贈り物だったとは…。
まりりんの価値が上がったような喜びを覚えます。

近代文学関係にもかかわる場所のおすすめもありがとうございます!

コロナウイルス蔓延の中、日本文学科を引っ張っていく学科長という大きな役割を担っていらっしゃった天野先生。
オンライン授業やmanaba、UNIPAの利用拡大など、大きな変革を迫られる中、学生の皆さんの学びを止めぬように学科の先生方の協力を得ながら、ご尽力くださいました。今年度で学科長の任は終わりとなりますが、これからも学科のために新しいことを始めていらっしゃるようです。楽しみですね!

天野先生、いろいろとお話をありがとうございました。

次回最終回、君嶋先生です。                                   まりりん