インカの骨笛

埼玉県川島町にある「遠山記念館」を訪れました。「アンデス展」が催され、インカ時代のケーナが陳列されていました。素材は、人の脛(すね)の骨です。

インカ帝国(首都クスコは世界遺産)の全盛時、日本では、京都を中心に室町文化が花開きました。共に、中央集権体制の下で、土器・織物・金属などの産業が興隆しました。

室町期には、一節切(ひとよぎり)という小さな竹の笛が吹かれました。尺八と一節切は似ていますが、穴の間隔が違い、奏法は異なります。

室町幕府は織田信長に倒され、一節切は廃れました。一方、インカ帝国もスペイン人ピサロによって崩壊し、骨のケーナも衰滅しました。P1050563

かつて、黒漆に金泥が施された一節切の音を聞いたことがあります。また、リャマの骨のケーナを耳にしたこともあります。共に哀愁を帯びた音で、文化の終焉を物語っているかのようでした。(注:浜松楽器博物館は、コンドルや鹿の骨で作ったケーナを収蔵)

(英文学科教員 村上 丘)