趣旨

<全国高校生英語再生ことわざコンテスト>を開催するにあたり、その教育的意義を3点説明します。

第1点。昨今、様々な所で、英語プレゼンテーション大会・英語スピーチ大会・英語ディベート大会が催されています。そこでは、出場者が身振りを交え、音声英語を伝達します。これらの大会の目的は、出場者の<スピーキング>技能を評価することです。第2言語習得において、発話能力の重要性は言うまでもなく、この風潮は今後も続くことでしょう。ところで、<スピーキング>同様、<ライティング>も重要な言語スキルです。この領域に関し、英語エッセイコンテストが実施されていますが、これは比較的長い英語の文章を作成することが要求されます。比較的短文の英語を作成する英作文コンテストもありますが、これは和文英訳で自由英作文ではありません。一方、本企画は、簡潔な英文を主体的に生成する点に特徴があります。高校生の皆さんが、入魂の英語表現を生み出すことを望んでいます。

第2点。このウェブサイトにある『英語再生ことわざハンドブック』(PDF)が示すように、<ことわざ>は、人間の知恵と経験を凝縮した文化遺産です。そこでは、音声・意味・文法において精妙な工夫が凝らされています。含蓄のある内容と洗練された形式の<ことわざ>は、熟読玩味・反復朗誦に値します。技巧の粋(すい)を極めた<ことわざ>を一旦身につければ、一生役立ちます。<ことわざ>を当意即妙に織り交ぜると、知的でメリハリの利いた文書を作成することができます。<ことわざ>を会話にさしはさむことにより、その場の雰囲気を和ませることもできます。さらに、文学・映画・絵画・彫刻などの芸術作品を解釈する際、<ことわざ>が役立つこともあります。このように利点満載の素材を、第2言語学習者が活用しない手はありません。この機会に、高校生の皆さんには、英語教材として秀逸な<ことわざ>に着目してほしいと願っています。

第3点。民謡・舞踊・楽器演奏・口承文学など、様々な文化が次世代に継承される場合、必ず<伝統>が重んじられます。しかし、文化の伝承とは、既存の習慣を頑なに守ることを意味しません。文化を継承するには、そこに新たな命を吹き込むことが不可欠です。なぜなら、時の流れとともに、<伝統>を支える個人も集団も変化するからです。文化は、<伝統>と<創造>に立脚します。それは、<ことわざ>にも当てはまります。<ことわざ>は、万古不易ではありません。新しい時代には、新しい<ことわざ>が要請されます。たとえば、no pain, no gainという<ことわざ>に基づき、音楽業界では no music, no life、鉄道ファンの間では no rail, no life、お米のキャンペーンでは no rice, no life という新奇な表現が生まれました。高校生の皆さんが、知性と感性と遊び心を発揮し、<ことわざ>の再生に挑戦することを期待します。