<全国高校生英語再生ことわざコンテスト>は、2019年度から2022年度にかけて、4年間実施されました。この時期は、奇しくも、地球規模の禍機に重なります。2020年には、新型コロナウィルスの蔓延が始まりました。ウイルスは次々に変異株を生み、人類はその対応に追われました。2022年には、ロシアがウクライナに侵攻し、数多くの住民が殺戮され、膨大な数の難民が生まれました。
人類にとって、感染症と戦争ほど、脅威を感じさせる災禍はありません。なぜなら、両者とも、天文学的な数の死者を生み出すからです。以下は、14世紀以降の、主だった事変です。
事変 | 時期 | 死亡者数 |
黒死病 | 1347-1352 | 7500万人 |
スペイン風邪 | 1918-1920 | 5000万人 |
インフルエンザ | 1556-1560 | 2500万人 |
第二次世界大戦 | 1939-1945 | 1600万人 |
第一次世界大戦 | 1914-1918 | 900万人 |
https://www.ddmap.jp/sp/infulenza-2021_with-corona/(参考 2023年4月20日)
https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Column/ISQ000002/ISQ000002_041.html(参考 2023年4月20日)
感染症と戦争によって、文明や社会が消滅した場合すらあります。仮に、人々が、運よく死から免れることができたにせよ、心身に深い痛手を受けます。感染症と戦争は偽情報を生み、新たな惨劇の温床になります。感染症と戦争は、終息後も、恐れや憎しみとなって、人々の心の奥底に沈潜します。
艱難に遭遇した時、人々は、<ことわざ>に頼ります。災禍を経験した先人の叫びは、後人の<魂>に呼びかけます。
❶ A disease known is half cured. | 病気の正体が分かれば、半分治ったようなもの。 |
❷ When the sun rises, the disease will abate. | 日が昇れば、病は弱まる。 |
❸ Desperate diseases must have desperate remedies. | 重篤な病には、捨て鉢の治療が必要だ。 |
❹ Wars bring scars. | 戦争は、傷痕を残す。 |
❺ When war begins, then hell opens. | 戦争が始まると、地獄の釜の蓋が開く。 |
❻ If you want peace, prepare for war. | 平和を望むなら、戦争に備えよ。 |
人類は、これからも、異常な事変に遭遇することでしょう。そのような折、人類は、<ことわざ>の意義と価値に気づくことでしょう。<ことわざ>は、人間に希望を与えてくれます。人間は、希望なしには生きられない存在です(グドール『希望の教室』)。
4年間の活動を振り返り、最も印象的だったのは、高校生の真摯な態度です。伝統的なことわざを変換するには、かなりの時間と集中を要します。この企画を成功裏に終えることができたのは、ひとえに、コンテストに参加した高校生のおかげです。大変な世相の最中、この企画に関わってくれたことを、心から感謝します。コンテストへの参画が、実り多い経験になることを願っています。