発刊の言葉

2019年4月、大妻女子大学文学部英文学科は、教員の構成(専門分野)・授業の内容(カリキュラム)と、学科名とを一致させるため、英語英文学科に名称を変更しました。その際、新名称の告知を目的として、<全国高校生英語再生ことわざコンテスト>を企画しました。

英語英文学科の専門領域は4つの分野(英語圏の文学・英語学・英語教育学・英米文化)から構成され、それはPELLEC(ペレック:Program for English Literature, Linguistics, Education and Culture)という略称で呼ばれます。ことわざは、これらいずれの分野とも関連するので、まさに適切なテーマなのです。

再生ことわざとは、Too many cooks spoil the broth(料理人が多すぎるとスープが駄目になる)> Too many clicks spoil the browse(あまり何度もクリックするとウェブページが損なわれる)のように、既存のことわざを現代風に更新(update)した表現を意味します。

ことわざは、安定した構造と意味を有しています。一方、人間には、従前の習慣を改変し、個性を発揮しようとする欲望があります。再生ことわざを制作するには、伝統と創造の調和を図らなければなりません。このコンテストでは、第二言語学習者が、その難題に挑戦することを期待しました。

企画の遂行にあたっては、次の方針を立てました。

  1. 主催は、大妻女子大学文学部英語英文学科とする。
  2. 運営は、学科有志からなるAPPT(Anti-Proverb Project Team)とする。
  3. 開催期間は、2019-2022年の4年間とし、毎秋開催する。
  4. 募集対象は、英語を母語としない高校生とする。
  5. 英語のことわざの一部を変換した、未発表の新しいことわざを募集する。
  6. 募集要項の告知ならびに作品の投稿は、学科のウェブを活用する。
  7. 原則として、毎回優秀賞1篇、入賞8編を選定する。
  8. 審査結果は、母語話者の講評を添え、ウェブ上で公開する。
  9. 優秀賞・入賞の受賞者には、賞品・賞状を授与する。

コンテスト実施期間中、新型コロナ感染症とウクライナ戦争という地球規模の事変が勃発しました。災禍の渦中にもかかわらず、コンテストに参画したすべての高校生、並びに、ご支援を頂いた高等学校の先生方に、心から感謝いたします。本邦初の企画を完遂できたのは、ひとえに、これらの方々のお陰です。

4年間を通じて、総計1365編の応募があり、合計優秀賞5編・入賞29編を選定しました。受賞作品は、どれも鋭い知性としなやかな感性を示す傑作です。技巧を凝らした表現と含蓄に富む内容は、高校生の作品とは思えないほど秀逸です。この出来栄えは賞賛に値し、コンテスト主催者として大変喜ばしく思います。

この度、これまでの活動を振り返り、<全国高校生英語再生ことわざコンテスト2019-2022活動報告書>を編纂しました。この報告書には、企画の経緯、概要、年度ごとの審査結果、合計約900編の投稿作品などが、掲載されています。この報告書が、伝統と創造の調和を追求した証となれば幸いです。

2023年5月
英語英文学科長 江連和章