選考結果(2019年度)

審査結果

優秀賞 1篇

Summer(渋谷教育学園幕張高等学校・2年)

入賞 8編

Aiai(筑紫女学園高等学校・2年)
Fireball(西大和学園高等学校・1年)
Macaroni(国際基督教大学高等学校・2年)
Mana(埼玉県立秩父高等学校・3年)
Ringa(佐野日本大学高等学校・2年)
Rio(東京都立日比谷高等学校・3年)
Taiyo(金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校・1年)
Tata(大阪星光学院高等学校・2年)

総評

<全国高校生英語創作ことわざコンテスト2019>は同年11月1日(金)から30日(土)まで募集を行い、津々浦々から総計88編の作品が寄せられました。とりわけ多くの応募作品を輩出したのは、大妻嵐山高校(20編/埼玉県)・誠信高校(18編/愛知県)・三国丘高校(17編/大阪府)の3校です。当企画に関心を寄せて下さったすべての方々に、心より感謝と御礼を申し上げます。

「創作」は、「独自の発想に基づき、新しいものを作る」という意味です。一方、「再生」は、「古民家再生事業」「折り鶴再生名刺」などが示すように、「既存のものを改変し、新しい価値を付与する」という意味で使われます。既存のことわざを作り替える作業は、「創作」より「再生」と呼ぶ方が適切と考えられます。本企画は、今後、<全国高校生英語再生ことわざコンテスト>に衣替えします。

今回のコンテストでは、入賞作品10編を選出する予定でした。しかし、応募作品を仔細に検討した結果、当初の方針を見直し、優秀賞1篇、入賞8編を選定しました。受賞された方々には、心より祝意を表します。

2020年度の企画の詳細は、今年6月初旬に公開される予定です。このウェブにアップされる<英語再生ことわざハンドブック>、今回の受賞作品、母語話者の講評、最後に付記した覚え書き等を参考にして、全国の高校生がことわざの再生に挑戦することを期待します。

2020年2月27日
大妻女子大学文学部
英語英文学科
APPT (Anti-Proverb Project Team)

選評

今回のコンテストにおける受賞作品を以下に提示します。全体の体裁を整えるため、応募者のコメントを編集した場合があります。表彰状と賞品<優秀賞:図書カード20,000円、入賞:図書カード10,000円>は、2020年3月中に送付する予定です。

〇 優秀賞 (1篇)

反義語の入れ替えという手法を使った作品です。ネット上の言説が主題ですが、誰しもが思いつくaccessではなくassessを使うことにより、汎用性が高まりました。「迅速な査定、慎重な受諾」という主旨は、現代社会における警句として有効です。形式内容共に一頭地を抜く作品で、コンテストの劈頭を飾るにふさわしく、優秀賞を謹呈します。

ペンネーム Summer
高校 渋谷教育学園幕張高等学校
学年 2年
既存のことわざ Be slow to promise and quick to perform.
創作ことわざ Be quick to assess and slow to accept.
応募者のコメント 誰でもが情報を入手できる今の世の中であっても、情報をすべて鵜呑みにしてはいけないという意味のことわざを作りたいと考えました。Be slow to promise and quick to performに出会い、slowとquickの順序を入れ替えることで、情報を鵜呑みにするな、というニュアンスになるのではないかと思いました。既存のことわざはpromiseとperformがpの音で頭韻になっていたので、創作ことわざも頭韻にすることを心がけました。
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original by retaining the same syllabic number and syntactic structure. Moreover, it retains the original’s adjectives but reversed. The skill with the alliterated verbs is characteristic of English first-language writers. This anti-proverb deserves to be a proverb on its own merits. This anti-proverb artfully conveys the need to discern between real and fake news: quickly ascertain information received, yet carefully consider its credibility. The ramifications of this anti-proverb apply to a wide range of contexts, not just information retrieval, but social relations.

〇 入賞 (8編)

企画の趣旨に沿い、それぞれ創意工夫がみられ、入賞を贈呈します。作品はペンネームのアルファベット順に掲載しましたが、応募フォームの規定に従い、表記を修整した場合があります。

ペンネーム Aiai
高校 筑紫女学園高等学校
学年 2年
既存のことわざ Speech is silver, silence is golden.
創作ことわざ Silence is silver, voting is golden.
応募者のコメント 「雄弁は大事だが、沈黙すべき時を心得ていることはもっと大事だ」ということわざがあるが、それを今日の日本の若者の政治の無関心に対する提言のことわざに置き換えた。「沈黙(無投票)よりも、投票すること(意思表示)が何よりも大事だ」
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original proverb’s same syllabic number and syntactic structure. This anti-proverb recognizes voting’s importance, though silence as inaction is acceptable in this Japanese society.
ペンネーム Fireball
高校 西大和学園高等学校
学年 1年
既存のことわざ All roads lead to Rome.
創作ことわざ All tries lead to goals.
応募者のコメント どんなことわざを作ろうかと、考え悩んでいるときに、「全ての道はローマに通ず」ということわざを偶然目にしました。このことわざが、色々”トライ”しながら、”ゴール”に向かっている自分と重なり、このことわざを思いつきました。Romeとgoalの発音が似ていることも考慮しました。
母語話者の講評 This anti-proverb replicates the original proverb’s same syllabic number and syntactic structure while striving for phonological affinity. This anti-proverb pays homage to Rome by equating efforts to their results.
ペンネーム Macaroni
高校 国際基督教大学高等学校
学年 2年
既存のことわざ The pen is mightier than the sword.
創作ことわざ The dream is mightier than the pen.
応募者のコメント ソードが暴力、ペンが知識ならば、夢はいわば透明で見えない不確かな武器です。見えないから、持ち続けることが難しいし、弱そうに感じてしまいます。けれども、透明で何でもないということは、同時に何にでもなりうるということです。どこまでも続き、どこまでも繋がります。そんな莫大な、無限大な力が、夢という武器にはあると思っています。もっと、暴力とか、決められた知識とかに縛られずに、自由に、夢を持って生きてほしい、生きていきたい。そういう気持ちを詰め込んだ作品です。
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original proverb’s same syllabic number while retaining the key adjective. This writer recognizes how dreams can override others’ (i.e. teachers’) actions resounding through their pens.
ペンネーム Mana
高校 埼玉県立秩父高等学校
学年 3年
既存のことわざ Failure teaches success.
創作ことわざ Dream teaches challenge.
応募者のコメント 小学1年生から高校3年生まで教科の勉強をしてきて大学へ行くと専門的になり、だんだんと勉強することよりも夢に向かう時間が迫ってきて挫折したくなってしまったときに、夢は挑戦のもとという意味の創作したことわざを思い出して突っ走ることができたら、という思いでこのことわざを考えました。
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original proverb’s same syllabic number and syntactic structure. This anti-proverb is constructed with the same intent of the original to tackle life’s challenges positively.
ペンネーム Ringa
高校 佐野日本大学高等学校
学年 2年
既存のことわざ Action is the foundational key to all success.
創作ことわざ Word is the foundational key to all spirit.
応募者のコメント "行動することは全ての成功への基本的な鍵である"とともに"言葉は全ての心を繋ぐ基本的な鍵である"と思います。母国語ではない言葉を学んでグローバル社会に対応していくことは大切です。言葉は心を繋ぐ橋となります。また私には知的障がいのある弟がいます。弟は知的障がいが重いため言葉が話せません。でも音を発し"弟の言葉"を私たちに伝えようとします。"心の言葉"です。(更に本を読んだりするときも本の中の言葉に応援して貰えるときもあります。)
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original proverb’s same syllabic number and syntactic structure. By placing “word” as a stand-alone, the writer recognizes its basis by which people believe and live.
ペンネーム Rio
高校 東京都立日比谷高等学校
学年 3年
既存のことわざ A bad workman always blames his tools.
創作ことわざ A bad student always blames his teachers.
応募者のコメント 日常の中でことわざに出来そうなことはいくつも思い浮かんだが、元になるような英語のことわざがなかなか見つからずに苦労した。自分がある教科の出来が悪いのをその教科の先生のせいにしがちなことを反省している。
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original proverb’s same syllabic number and syntactic structure. This anti-proverb also replicates the same wrongfully humorous reprobation by those who deny responsibility for their actions.
ペンネーム Taiyo
高校 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校
学年 1年
既存のことわざ All is well that ends well.
創作ことわざ All isn’t well that doesn’t begin well.
応募者のコメント 「始めが肝心」というメッセージを込めたかった。この意味を伝えるために最初はAll is well that begins well.としていたが、これでは「最初だけ良ければ全て良い」という意味になってしまい少し伝えたい意味と違ってしまうので、All isn’t well that doesn’t begin well.として、出来るだけ「始めが肝心」という意味に忠実になるようにした。
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original proverb in its syntactic structure. The writer shows understanding of the implications, which is akin to the phrase “start off the wrong foot”.
ペンネーム Tata
高校 大阪星光学院高等学校
学年 2年
既存のことわざ Actions speak louder than words.
創作ことわざ Reactions tweet louder than birds.
応募者のコメント 元のことわざの面影を残すことに最も苦戦しました。言葉を変えすぎるとただの創作文になってしまい、元のことわざを意識しすぎてしまうと面白みが出てこない。この折り合いが難しかった。こだわったポイントは、似た発音の言葉を選び、かつメッセージ性を持たせることである。最近は、鳥のさえずりよりもツイッターの「さえずり」の方が存在感が強いのではないでしょうか。
母語話者の講評 This anti-proverb successfully replicates the original proverb’s same syllabic number and syntactic structure. This anti-proverb skillfully recognizes Twitter’s power in how reactions (as tweets) exert more influence than bird chirping.